ぼくとかわいい君と【短編集】second (ページ4)

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｢俺は、ある｣

顔を上げて俺を射抜くように見つめてくる目黒に俺も少し身構える。

｢ねぇ、翔太くん。今日、俺を避けたのはなんで？｣
｢…別に、避けてないけど｣
｢うそ｣

言い逃れはできないよ、とでも言うように俺から視線を外さない目黒。まるで目黒の視線に囚われているような気分だ。

｢今日の撮影だけじゃない。最近、メッセージも無いし、俺と会おうともしてくれない。俺のこと避けてるじゃん｣

全部、バレてたのか。そりゃそうだよな。けっこう頻繁にメッセージ送ったり、デート誘ったりしてたのに、急に無くなったんだもんな。そりゃ気づくか…。

俺はなんと答えていいか分からず口を噤む。目黒はそんな俺の方に歩いてきて、俺の腕を取る。

｢翔太くんと俺は恋人でしょ？違うの？｣

…たぶん、違わない。つぅか、目黒にも恋人の自覚があったんだな、意外。いや、そうじゃないか。一度付き合った義務感からこういうこと言ってんのか。
なぁ、なんでそんなに俺をみじめな気持ちにすんの。

｢くるしい｣

｢えっ？｣

｢俺ばっかり目黒のこと好きでくるしい。目黒は俺のこと全然好きじゃないんだろ…？俺に好きとか言わないし、デートも誘ってくれない。

俺のことが可哀想だから、フるのが申し訳ないから、付き合ってんだろ…？

もう、そういうのいいよ。俺のこと好きじゃないんならほっといて…！｣

いつの間にか零れる涙。それを拭う気にもなれないまま、俺は逃げ出した。

目黒の今までの優しさを無下にした自分が許せないような気もするし、取り繕ってきた幸せを壊してしまって残念な気もする。でもやっぱり、悲しい。
一方通行の恋がこんなにも悲しいなんて知らなかった。中途半端に与えられる優しさがこんなにも苦しいものだなんて知らなかった。知りたくも、なかった。

｢翔太くん！｣

腕を強い力で引かれ、体の向きを変えられ俺を、何か暖かいものが包み込む。それが目黒の温もりだと教えてくれたのは目黒の、いつもの落ち着く香りだった。
息を弾ませ、俺を力強く抱きしめる目黒。

どう、したんだろうか…。

｢めぐ｣
｢不安にさせたのは謝る。ごめん。俺も、言葉が足りなかった｣

必死さの混じる声で言われる。

｢俺、翔太くんと付き合えたの、めちゃくちゃ嬉しかった。でも、自分の気持ち、言葉にすんの恥ずかしくて、なかなか口にできなかった｣