ぼくとかわいい君と【短編集】second (ページ21)

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「翔太」

ある日、テレビスタジオの廊下で不意に名前を呼ばれた。振り返るとそこには俺の幼なじみ兼想い人の涼太がいた。

「今仕事終わり？」

俺の方まで歩いてきた涼太はそう尋ねる。

「おう。涼太は？」

ちょっと素っ気ないけど、ちゃんと返事できた。俺頑張った。

「俺も今終わったとこなんだ」

最近、涼太単独のテレビ出演は増えた。涼太はバラエティにも柔軟に対応出来るから呼ばれやすいんだと思う。逆に俺はあんまりバラエティが得意じゃない。

「あれ、それ、どうしたの？」

ふと、涼太がそう言った。涼太の視線の先には俺が手に持つ大きめの紙袋。

あぁ、これか。確かにこんな大きいの持ってたら気になるよな。

「さっきまで雑誌の撮影だったんだけどさ、その時のスタイリストさんに貰った。なんか使わなかったからあげるって」

ほら、と試しに中身を一つ取り出す。それは俺にはちょっとオーバーサイズのパーカー。そのスタイリストさんがめちゃくちゃ推してくるからとりあえず貰ったのだが、意外と良さそうだ。まぁ、相手はプロだからセンスいいよな。

「それ、全部服？」
「え？あ、うん。ジーパンとか、Tシャツとか」

俺がそう答えた途端、涼太はその紙袋を俺の手から奪い取った。その強引さに俺は驚く。何も言えずにいる俺を置いて、涼太はガサゴソと中身を見だした。

え？何やってんの…？急にどうしたんだ…？

「これ、返してきな」
「へ？」

一通り目を通し終わったらしい涼太の言葉に俺は思わずマヌケな声を漏らす。たぶん、顔もマヌケだ。

「な、なんで…？」
「いいから。あと、そのスタイリストさんにあんまり関わっちゃダメだよ」

本当に意味が分からない。俺は混乱するばかりだが、涼太はそんな風に言う理由を教えてくれそうもない。

「人からあんまり無警戒にものを貰っちゃだめ。何か危険なものが入ってる可能性もある」
「危険なものって…」

相手はただのちょっと仕事でお世話になったスタイリストだというのに。俺に危険なものを渡す意味が分からない。でも、俺はよく危機管理能力無いって言われるし、意外とみんなそういうのに気をつけているのかもしれない。
俺は涼太に「分かった」と言って、紙袋を受け取ろうとしたら、涼太が「俺も一緒に行く」って言って、俺に渡してはくれなかった。

ほんとどういうこと？