ぼくとかわいい君と【短編集】second (ページ3)

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｢じゃあトップバッターで行ってくるわ｣

ふっかがそう言って撮影スタジオに向かうから、俺と涼太もその後ろをついていく。
その時、何かに腕を掴まれ、俺の動きは止まった。
振り返ると、何を思っているのかよく分からない顔をした目黒がいた。なぜだか眉を八の字にして、困ったような、泣きそうな顔で俺を見ている。

｢どうした？｣

努めて優しく、なんでそんな顔をするの、と言うように目黒に尋ねる。目黒はその反応が予想外だったらしく、言葉に詰まっている。

｢あ、えっと…｣
｢変な目黒｣

俺は笑ってみせる。それなのに、目黒は苦しげに顔を歪めた。目黒の手を振り払って俺はふっかと涼太の背中を追う。

…なんでそんな顔すんの。まじで意味わかんない。俺のこと好きじゃないくせに。まるで、俺に嫌われるのがいやみたいな…。

……俺に嫌われるのがいやなのは当然か…。一応仲のいい先輩だし…。俺の方こそ勘違いしてんじゃん。

目黒のあの表情が俺の脳内にこびりついて離れない。

撮影を無事に終えて帰り支度を始める。ワイワイ話しながら各々支度をしているが、俺はその輪には加わらず黙々と済ませた。早々に終わらせて早くこの、目黒がいる空間から出たかった。

｢じゃ、お疲れ｣

そう言って楽屋を後にする。

自分でも分かっている。同じメンバーである以上、いつまでもこんな、気まずい関係ではダメだ。ちゃんと折り合いをつけて、切り替えなきゃいけないって。でも、そのタイミングがなかなか掴めない。というよりは、たぶん、自分から別れを切り出すのが怖い。

やっと両想いになれた目黒を、自分の手で手放すのが嫌なんだ。

｢翔太くん｣

不意に後ろから名前を呼ばれる。振り返ると目黒がいた。
｢俺も一緒に行っていいですか？｣
｢え、あ、うん。いいよ｣

断るわけにもいかず、俺が了承すると目黒は俺の隣に並んだ。久しぶりに近くで感じる目黒に俺の胸はドキドキとうるさい。

目黒に俺に対する恋愛感情はないって分かってるのに嫌でも意識してしまう。

｢最近、しょっぴーなんかあった？｣
｢別になんも無いよ。目黒は？｣
｢俺は…｣

目黒の言葉が途切れる。そして、ピタリと目黒が立ち止まった。俺は数歩先で目黒を振り返る。
俯き、顔が見えない目黒。