09*名前 ページ9
、
相変わらず広くて殺風景な彼の部屋に足を踏み入れる。
と、ぐいっと腕を引っ張られて
背中からソファにダイブする。
…無論、犯人は私を見下ろす彼だ。
「……ピアスは？」
YG「終わったら返す」
「…嘘。先に取ったもの、返して」
YG「お前が置いて行ったんだけど？」
「耳に付けたままだったのに？」
YG「寝ぼけて外したんだろ」
「ああ言えばこう言いますね」
YG「お前こそ、その減らず口何とかなんねーの」
何も付けてない私の耳朶を
悪戯っぽく笑いながら指先で触る彼。
……そういえば、私。
「…私、名前知らない」
YG「…知る必要あんの？」
「ないけど……、」
なんか気になって。
私の言葉の先を察したのか
低い気怠げな声が囁く。
YG「…ミン・ユンギ。」
''ミン・ユンギ''
その名前を頭の中で繰り返す。
怠そうな目が、お前は？と聞いてくる
……名前なんて知っても意味ないのに。
「…チェ・A」
素直に答える私も私なんだけど。
彼…、ユンギさん、が瞳を細める。
「…ユンギさん、ピアス、返して。」
YG「……後でいいだろ」
「ダメです」
YG「信用ねぇな」
「自業自得でしょう」
迫ってくる唇を掌で覆って防ぐ。
ここで流されたらこの前と同じだ。
ユンギさんはチッ、と舌打ちした後
怠そうに緩慢な動きで立ち上がった。
…なんで私が舌打ちされてんの。
むしろ私がしたいんだけど。
YG「そんなに大事な物なのかよ」
ひょいっと投げ渡されるのは
紛れもなく私のピアスだった。
…ていうか人の物を投げる？普通。
いやユンギさんは若干、普通じゃないけど。
「…好きな人が似合うって言ってくれたから」
YG「それってこの前メッセージ送ってきた奴？」
その問いに目を伏せる。
何故だろう、咄嗟に否定できなかったのは。
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作者名：ただのルート
| 作成日時：2024年2月28日 23時
